IPPNW第16回世界大会感想
核戦争防止千葉県医師の会 花井 透
大会には、自分なりに三つのテーマを持って参加した。
一つ目は、原爆症認定集団訴訟のことを世界の医師たちに知らせなければならないということ。
日本の被爆者たちは自国の政府に対して今なおさまざまな要求を掲げて運動を展開しており、とりわけ現在、ガンなどで苦しんでいる被爆者たちが、自分たちの病気は被爆したことと関係があるということを、国を相手取って裁判にまで訴えざるを得ない状況、それほどに日本政府の被爆者への政策が、非人道的、非科学的であること。翻ってみれば、歴代政府は、原爆医療法を制定したのが戦後十二年も経ってからのこと、福祉分野の法律は二十三年後、さらには健康診断の内容を各種ガンの発見に見合ったものへと改めたのはなんと四十三年も経ってからのこと、こうした延長線上に、被爆後六十年になろうとしている今なお、裁判に訴えなければならないほどの被爆者の思いがあること。
このテーマでの発言は、向山先生に託すことが出来たが、各国の医師の反応がどうだったのかは、他のセッションに出ていたのでまだ聞いていない。
二つ目は、朝鮮半島の非核武装化を中心テーマとする「六ヶ国協議」を進展させるためにIPPNWとして何が出来るかということ。
そのためにはとりわけ朝鮮の医師たちとの交流が期待されたが、シンポジウム「朝鮮半島における核の危機」には予定された北からの参加は無く、また南からの医師も二、三人で、その発言も印象的なものは無く残念であった。ただIPPNWマッコイ会長の発言――核は核を呼ぶ、イラクと同じくアメリカの先制攻撃のリストに入っている北朝鮮の怖れも理解できる、米朝がともに譲り合って強い攻撃的な言葉をやめること、とりわけアメリカの役割が重大で国内の民主主義にもとづくアメリカ国民のの世論が決め手――が救いであった。またIPPNW日本支部が提案している‘北東アジア非核武装地帯条約’について、その意義と内容の検討は必要であろう。
三つ目は、中国にも核実験による汚染地域のあることまたその被災者がいるに違いないと思われるが実情はどうかということ。
核テロや放射線源の管理をテーマとして、中国の専門家が講演するセッションがあったが、自国の核実験やその被害についてはまったく触れなかった。勇気が無いため会場では質問の手を上げることは出来なかったが、休憩時間に演者二人にそれぞれ別の場所でつたない英語で聞いてみると、一人は被災者は「いない」と言う。他の一人は「いる」と言い、政府はその子供も含めて系統的にフォローアップしている、染色体の異常を認めているケースもあるがシリアスなレベルではないとの答え。さらにもう一人この北京大会の会長であるRushan教授に聞いてみると、「いる」との返事で、ただフォローアップの仕事に直接関わっていないので細かなことがお話できないとのことだった。帰りの機内で、これまでのデータが公開されているのかどうかまで聞かなかったのを悔やんだが、またの機会を待とう。
イラクヘの自衛隊派兵を続け、憲法改悪を公然と掲げ、靖国神社参拝を止めないことを公言しながら、国連常任理事国入りを強く表明している日本政府。アジアのどれだけの国が理解を示すだろうか。六ヶ国会議の次の開催の見通しも危ぶまれている。
しかしわたしたちは、IPPNW執行部が提起する〈力ではなく話し合いで〉、〈国連を中心とする新しい平和の秩序を〉を支持して、NGOとしての活動を積み重ねていかなければと思う。