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第16回 IPPNW 世界大会報告

                             東京・中泉 聡志


 米国がイラク侵略戦争を正当化する主張を繰り返す中、『PEACE THROUGH HEALTH』というテーマを掲げて開催された、IPPNW世界大会 IN 北京に参加しました。初めて行く中国・北京はどんより曇っていて、空気が汚い!という印象でした。多くの車が行き交い、横断歩道を人が渡っていようとクラクションを鳴らしながら向ってくる様子に驚きを隠しきれませんでした。空港からバスでホテルへ直行し、翌日から始まる本番へ期待と不安が高まりました。

 大会には世界各国から多くの医師・医学生が参加していました。大会会長から「医師は核兵器廃絶と戦争防止に特に責任がある。核兵器とテロが人類の健康に及ぼす影響を指摘し、核廃絶に続く道をはっきりさせたい」世界平和市長会議会長でもある秋葉市町からは「核戦争は始まってしまえば、医師も市長も何もできない。悲劇を繰り返さないためには、核廃絶しかない。そのために唯一の経験者であるヒバクシャが、60年の苦しみを乗り越えて、若い世代にその経験を伝えようとしている。みんなの声を核保有国に届けよう」と力強い発言に大いに心を打たれました。

 私たちはこのような被爆者から直接「想い」を受け継ぐことのできる最後の世代であり、次の世代へその「想い」を伝え、そしてなんとしても我々の世代で核兵器を廃絶させなければと思いました。また、連日イラク情勢についての報道が続いていますが、あの侵略戦争では、一部の大国のみが利益を得て、一般市民には貧富の差が広がり、疫病、環境問題などを引き起こし、新たなテロリズムを生み出している。つまり、戦争は人を切り離し、暴力とテロを生み出すのみで多くの市民の自由が押さえつけられている中では本当の民主主義は育たないと感じずにはいられませんでした。一方では日常生活の中では、平和に対する問題が深く関わっているにもかかわらず、なかなか日常の中で実感する機会が少なく、身近なところで平和が脅かされていることに気がつかないでいることが多くあると感じました。

 他にもいくつかのSESSIONやWORK SHOPで核廃絶・核戦争阻止・被爆者の運動の闘いの報告とこれからの決意表明がされました。言葉や文化が違ったり、年齢が違ったり、思想・信条の違いなど多くの相違点を持っていても、核兵器廃絶に向けて1つになり、自分のまわりから地道な活動を続けています。とくに医学生たちが難民の子供達を救おうと平和運動の先頭に立ち、力強く発言する姿には大いに励まされました。彼らの姿を見て、草の根活動の重要性と、一つになることが大切であるとおもいました。

 世界から集まった多くの核廃絶を願う人たちの想いは、核兵器廃絶は世界中の人々の想いであると思わせました。そして、世界の各地で彼らによって行われている、小さな草の根運動が周囲の人々を動かし、国をも動かし、そして世界を動かす力になることを実感することができました。最後に「人類と核兵器は共存できない」と核廃絶と核戦争防止への医師への役割を世界へ呼びかけ、大会は終了しました。わずかな時間でしたが、平和への決意を新たにし、これからの生き方を考えさせられました。

 会議以外では、オプションで参加した北京郊外の病院見学に行きました。地域の有床クリニックで周囲の住宅と比べて大きく立派な建物でしたが、中はガラーンとしていて、薬品も機器も不足しているようでした。その貧富の差にショックを受けました。また、夕食のBeijing night show では中国5,000年の歴史を実感する壮大なステージを見学することができました。いろいろな意味で有意義な時間を過ごしたと思います。

 お世話なった方々に感謝をしたいと思います。