戻る

            IPPNW世界北京大会に参加して

                          耳原総合病院研修医 大矢 亮 


 今回IPPNW世界大会に参加して感じたことを大きく3つに分けて振り返りたいと思います。


1.会議を通して感じたこと

今回出席した会議・シンポジウムの中で最も感銘を受けた発言はシンポジウム「朝鮮半島の核危機」の中のモンゴル代表の方の発言でした。恥ずかしながらモンゴルが非核化されているという事実は全く知りませんでしたので、その分だけ中国とロシアという核保有国にはさまれているという状況にあって自国の非核化のために声を上げ行動に移し、中国とロシアに非核化を認めさせ、ついには唯一の国連が認めた非核国にまでなったという事実には強く驚かされるとともに勇気付けられました。全体会議での秋葉広島市長の発言も非常に力強く、今後の課題と希望の両方を見出すことができました。特に原爆学講座などを通して被爆体験を後世に伝えていこうという考えには大いに共感でき、今後私も何らかの形で平和教育に関わりたいという思いを新たにしました。また、今まで自分が思っていたよりも今回はるかに強く実感として感じたことは、日本がアメリカの核の傘下に入っているという事実と日本にアメリカ軍基地があるということが世界的にも政治・軍事など多くの点で大きな問題になっているという事実でした。この点に関しては私も含めて日本国内外で認識が大きく違うのではないかと思います。今後は今回感じた世界からの目で日本の問題点を見直すことを忘れずに、この違いを周囲に発信していきたいと思います。


2.個人的な交流から感じたこと

つたない英語で個人的に話をした中で一番印象に残っているのは同年代の中国人女性に言われた「日本と中国が仲良くなるにはどうすればよいと思うか。」という質問で、私はまず日本政府が歴史的事実に対してきちんと謝罪する必要があると思うということは何とか伝えることができましたが、それから先の取り組みについては考えがまとまらずうまく伝えることができませんでした。このことは自分の中に課題として残ったので、今後機会を見つけて自分なりの答えを見つけて行きたいと思います。


3.北京について感じたこと

今回北京空港に着いてまず衝撃を受けたことは北京の空気のよどみでした。太陽はもやがかかっているようにはっきりとは見えず、空気とともに粉塵を吸っているようでいきなり頭痛と呼吸困難感に襲われました。その中で私が思ったことは、高度成長期の日本もこのようであったのかということと、それを克服した日本の技術・経験が今の中国に生かせないのかということです。ただし、地方病院見学のために北京郊外に行った際に高速道路脇の土地が一面植林されていることを見て感心するとともにうれしくなってしまいました。また、北京市街で強く感じたことは貧富の差の大きさで、一党支配という政治体制も含め大きな矛盾を抱えたままこの国が今後どのように進んで行くのかということに強い興味を覚えました。

全体を通して一番印象に残っているものは、世界各国からIPPNWに参加した方々の目の輝きです。現在の世界情勢の中、残念ながら今回のIPPNWでは必ずしも大きな希望を抱いて帰国するというわけには行きませんでしたが、世界中に核兵器廃絶という共通の思いを抱いている医師がたくさんいること、そしてその方々がいきいきと活動されていることを肌で感じることができたので、それを今後の希望として自分にできる形で関わって行きたいと思います。5日間本当にありがとうございました。