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第16回IPPNW総会(於北京)印象記

斎藤禎量

今回の16回IPPNW総会の印象は、ひとことで言えば、期待がかなえられた反面、軽い失望感も否めなかったということである。

まず参加者が少ないのが気になった。現地の参加者より「つどい」関連の参加者のほうが多かったと思えるほどであった。IPPNWそのもののエネルギーが低下しているのか、中国北京という立地条件に問題があるのか、大会の準備に問題があったのか分析が必要と思う。しかし、少なくとも現地主催者の方々が力を尽くして温かくもてなしてくれたことを随所に感ずることができた。又、「つどい」の参加者の中の若手の方々が毎晩遅くまでニュースを発行するなど大いに奮闘されたことに励まされ、3日間元気よく参加することができた。

私自身としては全体会と分科会のいずれの発言者からも沢山の得るものがあった。これから取り組むべき重点課題が次第に明らかになってきたように思う。

広島市長の秋葉氏が来年行なわれるNPT再検討会議に向けて大きな運動の波を築いていく行動計画を、理念的裏打ちを添えながら格調高く述べられた。その中で特に教育の重要性が強調されことが印象に残った。一般論として教育の重要性を強調するだけでなく、核と平和の問題を学問の体系の中にしっかりと位置付け、大学に講座を設けるなどの具体的な提案をしながら、既に地元広島を始めいくつかの大学で取り組みが始まっていることを報告し参加者に希望と勇気を与えてくれた。

北東アジアの分科会では非核地帯設置の意義と現実性について論議され、それを進めるうえで日本の米軍基地が障碍になっていることが浮き彫りになった。「非核地帯」を一つでも多くしていくことが核廃絶を目指す戦略的課題になっているのを考えれば、米軍基地撤去は日本に課せられた国際的な責務でもあることを再認識させられた。

「核テロ」の問題にも関心が寄せられたように思う。いま世界が直面しているさまざまなタイプの戦争や紛争の中で核超大国対「テロリスト」という構図が広がりつつある情勢のもと、「核テロ」の問題がますます現実味を帯びてきたという実感を深めたのではないかと思う。

IPPNWが核戦争の「予防」という立場からスタートしたことを考えると、この可能性の高まりを指摘されている問題にも本腰を入れて取り組まなければならないと思う。

総会全体を通じて核戦争と平和を巡る問題が多面的に語られ、その中で各参加者がそれぞれの立場で積極的に受け止めて次の活動に生かしていくものと思う。しかし、討論が不十分で論議が深まらなかったのは残念であった。言葉の壁のある国際会議では難しいのかもしれないがもう少し準備と工夫が必要だったのではないかと思う。

 ノーベル平和賞を受賞した団体の重要な活動の節目として、今度の大会は平和と核廃絶のメッセージを世界に向けて強力に発信し、その使命を果たす絶好のチャンスであった。アメリカが使用した劣化ウラン弾の被害が報告され、核兵器小型化の研究や先制使用を公言しているという今まさに進行している危険な現実を前にして、IPPNWとして何らかの意思表示を「大会声明」の形ででもだせればよかったと思う。