ミ サ イ ル 防 衛 (要旨)
=== 日本の視点から ===
松井和夫
北アジアにも緊張を高める原因が多々あり、それらがMD(ミサイル防衛)など日本の軍備強化の正当化に利用されてきた。 北朝鮮の拉致事件を口実に、政府はMDの必要性を説き、導入を決定した。
北朝鮮には射程距離1000Kmのノドン・ミサイルが200基あり、MD導入の根拠のひとつである。しかし、北朝鮮がアメリカの核を含む圧倒的な軍事力に威嚇されつづけてきたことが、同国に核を含むミサイルの改良をさせたのだという事実を見過ごすことはできない。日本のミサイルは射程距離から見る限り純粋に防衛的なものである。しかし、日本は高度な商業用ロケット技術を持ち、即、ICBMに転用可能である。また国内には大量の米軍保有ミサイルがある。このトマホーク・ミサイルは巡航ミサイル。横須賀はトマホーク垂直発射装置(計546システム、大半は即発射体制)を備えた6軍艦の母港である。 中国は20基のICBMを保有。核の多弾頭化を進めている。
日本は1993年、アメリカとミサイル防衛に関する共同開発の予備的共同研究を開始。98年、北朝鮮ミサイル飛来を機に共同研究開始を決定。
日本は、すでに4隻のイージス艦を保有。来年にはアメリカ自身が「ないよりまし程度」と言っている未完成品のPAC-3を購入予定。 SM-3の導入も決めているが、これは明らかに防衛兵器の範疇を超える。
政府やMD論者が主張するMD導入理由は、日本対する大量破壊兵器を含む威嚇への対抗手段(抑止)、これは核抑止理論と同じ詭弁。2番目の理由は、米軍基地を守るため。これが本音で、アメリカは仕返しを心配することなく先制攻撃が可能となる。3番目はミサイル誤発射に対し有効。唯一意味ある理由ではあるが、ミサイル軍縮することがより賢い解決法。
導入に対する問題点は、軍拡に火をつけること。事実中国はミサイルのMIRV(多弾頭)化や、衛星攻撃兵器の開発を開始。北朝鮮もアメリカ本土到達可能ミサイルを開発。2番目にICBM攻撃能力を持つ可能性もあり(極めて実現不可能ではあるが)、ロシアや中国にとって核抑止力バランスを崩されることになり脅威となる。さらにMTCR違反である。
このMDの導入を阻止するものとして、国内外からの批判・集団的自衛権を否定する平和憲法第9条・武器輸出禁止政策の3つがある。 MDの日米共同運用は憲法違反。だからアメリカの憲法改正への圧力は執拗で、9条は崖淵に立たされている。 また、平和憲法の精神にのっとり、武器輸出禁止が閣議決定、国会決議されている。
日米共同研究・開発では海上配備MDに関する4コンポーネントを取り扱う。そのひとつ弾頭の先端をカバーするノーズコーンは特殊合金で、中の赤外線探査装置を高温から保護する。三菱重工が開発し製造に当たる。MDの次の段階ではこのノーズコーンを輸出する必要があり、武器禁輸が障害となっている。 経団連は政府に武器輸出禁止の見直しを強く迫っている。
MD計画を打ち砕くためには内外からの批判を高めること。すなわちMDは平和に役立たないこと、ミサイル拡散防止に役だたないばかりか、ミサイルや核兵器を拡散させることになることを宣伝すること。MDは兵器産業とそれに群がる政治家の役に立つだけのものであることを宣伝することが大切。そしてミサイル防衛が実用化不可能な計画であることを広く知らせること。
世界の人々へ、日本の憲法や武器禁輸政策を守る戦いを支援して欲しい。 日本が憲法を変えなかったら、日本が武器禁輸政策を放棄しなかったらアメリカはMDの次の段階に行くのが困難、特に北アジア地域で。
MDに反対する運動を共に断固、戦おう!
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