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劣化ウラン弾の影響の解明と使用禁止を求めよう

―イラクの子供たちを支援する活動を通して―

 

                      

核戦争に反対する医師の会(愛知)

愛知県保険医協会  中川武夫


 2003年夏、愛知県では、セイブ・イラクチルドレン名古屋の招きで来日したアル・アリ、ジャナン・ハッサン2人のイラク人医師の講演会が開催された。講演では、「イラクでは湾岸戦争後10年で、先天異常、悪性腫瘍、子供の白血病などが増えており、劣化ウランの影響と考えられる。経済制裁で医療体制が崩壊しており、白血病の子供たちは助かる見込みがない。」と写真やデータに基づいて話された(「いま、イラクの子どもたちは」のパンフレット参照)。参加者は、白血病の発生率が大きいことと、日本では化学療法や骨髄移植などで命を救うことが可能となってきているのに、医療が破壊され薬も手に入らないために死を待つだけというイラクの現実に大きな衝撃を受けた。

この講演を受けて、われわれ反核医師の会はセイブ・イラクチルドレン名古屋を支援して、イラクからアッバースという白血病の子供を招いて名古屋大学病院で治療を行うとともに、若い2人の医師を招いて研修の場を提供する取り組みをはじめた。全額募金でまかなう費用負担の関係もありアッバース君一人しか呼べなかったが、今緩解を迎えることができている。また、研修中の2人の医師からの、「イラクできちんとした医療を行うためにも医療器具などの支援をお願いしたい」との申し出に応え、医療機関などに医療機械の提供を呼びかけた。北海道や広島からの協力もあり、第1便として8月3日に3個の大型コンテナーいっぱいの医療機器を送り出すことができた。引き続き第2便を送り出す準備を進めている。

白血病や悪性腫瘍、先天異常や奇形などの原因についてはイラクの医療関係者のデータからは劣化ウランが強く疑われている。にもかかわらずアメリカ、イギリスなどは「明確な科学的因果関係は立証されていない」との理由で、イラク戦争でも大量の劣化ウラン弾を使用し、今後の使用も否定していない。IPPNWとしても、劣化ウランの放射線毒性、科学毒性について科学的な調査を実施し、原因を明らかにするとともに、劣化ウランの影響が否定されるまでは劣化ウラン弾の使用を禁止することを提言すべきであると考える。