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劣化ウラン弾の使用を許さず、イラクの人道支援を

保団連  山上紘志

 はじめに

 2003年9月に長崎県で開催された第18回保団連医療研究集会中に女性部懇談会が非公式に開かれた。そこで愛知保険医協会理事の産婦人科斎藤みち子氏が「いまイラクの子どもたちは」を発表された。その資料は来日していたイラクの医師ジャナン・ハッサン氏(バスラ母子病院・小児科医)とジャワード・アル・アリ氏(バスラ教育病院癌センター長)から提供されたものであった。この二人の医師の招聘と名古屋大学医学部附属病院入院中のアッバース・アリ君と同病院に白血病治療に研修しているイラクの二人の医師の来日には、セイブ・イラクチルドレン・名古屋(代表:小野万里子弁護士)の支援活動に依っている。斎藤医師はその後、大阪をはじめ全国の協会・医会の女性医師・歯科医師の会の要請の積極的応じて、この講演を続けている。

 保団連理事会は、いのちと健康を守る医師・歯科医師の自主的な集団として、劣化ウラン弾の健康・環境破壊の実態をよく知るために。2004年2月に斎藤医師を講師として理事会特別討論をおこなった。理事会後、劣化ウラン被害の実情を理事だけではなく、会員、国民にも広く啓発する必要を痛感し、このこのパンフを発刊する運びとなった。

 劣化ウラン弾の低線量内部被爆の健康破壊

 昨年6月のイラク支援特別委員会第156国会で川口国務大臣は、WHOやUNEP(国際環境計画)の調査結果を引用して、「劣化ウラン弾の人体および環境に対する影響はほとんどない」、「劣化ウランの放射性は微弱であって、劣化ウランと関係する健康影響を示唆する証拠は得られなかった」と答弁している。在日米国大使館の劣化ウランのQ&Aホームページには、国際原子力機関(IAEA)の調査結果から、上述したほぼ同じ内容の回答をしている。琉球大学理学部教授矢ケ崎克馬氏の別章の論文では、低線量内部被爆についての国際放射線防御委員会(ICRP),WHOの非科学的被爆評価基準を批判し、まさにWHOは劣化ウラン弾を免罪する先兵の役割を果たしていると糾弾している

 2003年10月にハンブルグでNGO主催のウラニウム兵器禁止に関する国際会議が開催された。そこで元ペンタゴンの劣化ウランプロジェクトの責任者が「劣化ウラン弾の危険性を米軍は1943年から知っているが、この兵器を手放したくないために、嘘をつきつづけている」と発言していた。

 いまイラクの子どもたちは

 イラク南部のバスラ市内では湾岸戦争後、先天性異常が7倍以上となり、特に多重奇形が増えている。小児癌は2002年には5倍になり、家族ぐるみの癌の発生や、重複癌、白血病、リンパ腫も増えている。英米などの占領軍の無差別殺戮・虐待・環境破壊、経済的制裁、治安の悪化などの原因で、これらの子どもたちをはじめ、イラクの人たちはまともな医療を受ける機会は皆無である。私たちは占領軍・自衛隊の即時撤退、劣化ウラン弾の使用禁止を実現し、国連を中心に民族自決と民主主義を保障するイラクの国政回復を求める。このパンフを利用して会員や国民にイラクの実情を啓発し、イラクの人道支援、

劣化ウラン被害の調査・学習をさらに強める。