第26回核戦争に反対し、核兵器の廃絶を求める医師・医学者のつどいin愛知
被爆・戦後70年
医療者は核も戦争も許さない
記念講演「核なき世界は実現できる」秋葉忠利氏講演
常任世話人 秋山 和雄
歴史を振り返ると戦死者の数は減ってきている。人類を平和にしたのは@国家が武器を独占したことA商業・貿易による交流が拡大したことB女性の価値観の広がり(女性化)Cコスモポリタニズム(世界市民の意識)、D暴力が不毛であることの認識(理性化)などによる。平和を考える場合、大切なのは、国家は軍隊を持つが都市は軍隊を持たないことである。つまり「国家」から「都市」へのパラダイムの転換が必要である。平和首長会議を1982年に設立したが現在161ヵ国、6,857都市が加盟し、非核・平和の理念の連帯を広げている。
アメリカ人の平均的考え方は、広島・長崎への原爆投下は、戦争を終わらせ、日米の兵士の死者を少なくするために正しかったという認識である。しかしそれは広島・長崎の被爆の実相を知らないためである。被爆者の悲願は核の廃絶であり、それが人類生存の必須条件でもある。被爆者は本来死んであたりまえの中で生き続け、被爆体験を語り続け、三度目の核戦争を防止している。
NPT再検討会議(2015年)は最終文書が採択されなかったのは、核保有国の頑迷な態度と「満場一致」方式に問題がある。しかし世界的に核廃絶の運動は盛り上がりを見せている。2014年ノルウエ―、メキシコ、オーストリアが「核の非人間性を訴える」会議を開催し、また2015年イランの核開発問題は平和的解決が合意され、条約の制定が進んでいる。しかし一方日本政府は2013年ニュージーランド提案の「核兵器の人道上の結末に関する共同声明」また2014年オーストリア提案の「人道の誓約」に署名していない。しかし核弾頭数の推移、核実験の数を見ても世界は世論で遅かせる。来年の参議員選挙が反核・平和の運動にとって大きな意味を持つことは明らかだ。
特別講演
太平洋での核実験被害を取材し、テレビでのドキュメンタリーのみならず映画も制作している伊東英朗氏(南海放送ディレクター)による特別講演。
「ビキニデー」「第5福竜丸事件」という呼称は適切ではない。なぜなら、中部太平洋では1946年以降120回以上の核実験が行われていて(主に米国による)、その被害は長期間・広範囲に及んでいるから。1954年3月1日の第5福竜丸の被曝はあまりにも象徴的だが、海流・気流によってどの程度放射能が広がっているかということは明らかされていない。実際は日本列島や米国本土でモニタリングされているので記録に残っているはずだ。
問題は第5福竜丸だけでもマグロ漁船だけでもない。マグロ漁船の多くは沖縄沖や四国沖に漁場を変え、しかも54年12月で7億200万円というはした金と引き換えに検査打ち切りとなっている。捕鯨船や貨物船の船員は強制入院させられた者がいたり、返還前の沖縄では雨水や魚介には放射能ゼロだと米軍が太鼓判を押したり、日本の新聞でも食料品の被曝は大丈夫という記事が相次いでいた。今回の取材の中で、日本列島の放射能雨を調査するために、このころ建てられた家屋の下の土壌検査を行ったところ、沖縄・京都・山形で8/9軒でCe137が計測された。日本中に放射能雨が降り注いでいた証拠となる。
福島でも事故直後に放射能汚染が広がることを知らせず、スピーディを活用せず、被害が広がる中で12月に収束宣言をしている。
情報を隠蔽し被害を拡大させているのは米国原子力委員会という露骨なビジネスの力ではないか。「X年後」「X年後Part U」の上映で世論を広げ、仇討ちしたいという気持ちで報道の仕事をやっている。自主上映に協力を呼びかけたい。
第2日(11月1日)第1分科会
「核廃絶への展望」の概要報告
常任世話人 岡本茂樹
第1演者の冨田宏治氏(関西学院大学法学部教授)は、「2015年NPT再検討会議の成果と核兵器廃絶への課題」をテーマに講演した。冨田氏は、はじめに「ヒロシマ・ナガサキをくりかえすな!」という被爆者の崇高な決意と悲願、そして「被爆者とともに!」という原点に立つことを指摘した。そしてNPT再検討のプロセスを第1段階(NPTの不平等性の告発)、第2段階(核兵器のない世界の平和と安全保障)、第3段階(核兵器の非人道性の告発から核兵器の非合法化へ)、第4段階(核軍縮の領域における民主主義と「法の支配」の確立へ)に分け解説した。そして「核抑止力」を克服し、民主主義と「法の支配」に逆行する安倍政権に立ち向かうという闘いの展望を示した。
第2演者の眞鍋穣氏(全日本民医連被ばく問題委員)は、「オスロー、ナヤット、ウィーン『核兵器の人道的影響に関する国際会議』の示したもの」と題して講演した。眞鍋氏は、2015年のNPT再検討会議は、中東問題がネックになり採択文書なしに終わったが、核兵器禁止条約を核保有国抜きでも推進するとのICANの立場こそ核廃絶への確かな道であると訴えた。
日本における放射線被害‐過去・現在・未来‐ 本田孝也常任世話人
生協いいの診療所の松本純先生より「福島における放射線障害の実際」が報告された。福島第一原発事故から4年半が過ぎたが、震災関連自殺に歯止めがかからず、震災関連死は2013年12月に1605名と震災による直接の死者を上回った。甲状腺検査では、あらたに25例の甲状腺癌がみつかった。放射線の影響によるものかどうかは不明である。事故後、福島県で出生した赤ちゃんの先天異常率は全国平均に等しく、人工妊娠中絶の数も増加しなかった。
生協きたはま診療所の聞間元先生は反核医師の会、原発プロジェクトの「放射線リスクに関する基礎的情報」批判‐出版の目的と三つの視点について解説した。第一の視点として、福島第一原発事故は未収束であり、原発周辺住民の帰還を進めることは時期尚早である。第二の視点として、低線量被ばくの人定影響は無視できるという主張は科学的根拠を欠き、放射線の影響を受けやすい子供たちの安全と健康を守る観点から容認できない。第三の視点として、避難継続か帰還するかは、上からの押しつけではく、あくまで住民の選択によるべきで、いかなる選択に対しても完全な支援策が保障されなくてはならない。
第3分科会 「憲法9条から考える〜集団的自衛権」 塩川哲男常任世話人
約40人が参加、能登正嗣つどい実行委員と深澤尚伊常任世話人が司会を務めた。
まず、名古屋の川口創弁護士(イラク派兵差止訴訟弁護団事務局長)が「憲法の破壊にあらがう」と題して報告。彼は、2008年4月の名古屋高裁イラク派兵違憲判決を引き出した中心人物である。イラク戦争とは何であったか振り返るため、ジャーナリストの西谷文和氏のDVD(2007年)を供覧。劣化ウランは湾岸戦争での5倍の2000トンが使われ、クラスター爆弾(2割はわざと不発弾として落下させる)やナパーム弾などの非人道兵器が使用された。「テロとのたたかい」が逆にテロを増幅させ、ISを生み出した。現代の戦争は「無差別殺戮」にその特徴がある。
一方で米国兵士にも傷跡を残し、退役軍人への予算は日本の防衛予算より大きいという。軍事予算の増大に対して、米国の方針は@ 戦争の民営化、A 他国への肩代わりである。川口氏は「どの子どもにも平和な未来を─集団的自衛権」リーフレットの普及を訴えた。
続いて、小林武沖縄大学客員教授が「沖縄から戦争法廃止・平和憲法再生を展望する」と題して報告。戦争法はなぜ許せないのか(@ 憲法違反 A 立憲主義破壊 B 民主主義蹂躙)、どうしたら廃止できるか(@ 法の施行阻止 A 賛成議員の落選運動 B 違憲訴訟の提起 C主権者国民の運動)述べられた。
辺野古新基地阻止がホットな課題となっている。安倍政権は日本の法的枠組みを破壊し、何が何でも強行しようとしている。これに対し,翁長知事・稲嶺市長は「あらゆる(法的)手段を使って阻止する」と表明しており,どちらに大義があるかは明らかである。
フロア発言としてシールズ東海の石原史歩里さんが自分がシールズに参加した理由や安保法は可決したけれどあきらめないと決意を述べた。
今の日本の政治状況を正しく理解することは、本会にとっても必須であり、その意味でも有意義な分科会であった。