原爆症認定集団訟・広島地裁判決にあたって
2006年8月8日
核戦争に反対する医師の会
代表世話人 児島 徹
代表世話人 山上 紘志
代表世話人 中川 武夫
被爆61年目を目前にした8月4日、被爆地である広島で地方裁判所は、原爆症認定集団訴訟で41名全員の原告、全員勝訴の判決を下しました。
本判決は、大阪地裁での9人の原告全員勝利につぐものであり、国の認定却下の不当性を重ねて明らかにしました。
判決では、原因確率が残留放射線による外部被曝や、放射性降下物を吸い込むことなどによる内部被曝の影響を十分に検討せず、「様々な限界や弱点がある」と認定し、「機械的に適用するべきではなく、一応の参考資料として評価するのにとどめるべきだ」としました。
さらに発熱や下痢、脱毛などの被爆当時の急性原爆症がみられた場合、直爆による初期放射線量が少なかったとしても、これらの症状が原告全員に表れていることや病気が進行したほかの原因が見当たらないことなどから、全員の疾病を放射線と関連づけました。
こうした判断は、直接被爆したか爆発後に市内に入って被爆したかに関係なく、一定の症状が確認できれば広く原爆症と認める判断を示したものです。
判決は、月の大阪地裁判決と同様に、認定審査での「原因確率」に頼りすぎることを戒める点は共通しますが、症状をより重視する点では、一歩踏み込んだ判断となりました。
認定裁判で9回も敗北を重ねた政府は、今度こそ非を認めるべきです。
全国の原告183名のうち24名がすでになくなられています。もうこれ以上長引かせることはできません。
今回の判決を厳粛に受け止め控訴しないこと、5月の大阪地裁判決についても控訴を取り下げることを強く要求します。そして、判決が指摘したように、被爆状況や健康状況を全体的、総合的に判断するよう原爆症認定行政の抜本的見直しをただちにおこなうことを強く要求します。