2009年3月1日

内閣総理大臣 麻生 太郎 殿

厚生労働大臣 舛添 要一 殿

原爆症認定集団訴訟の全面解決と被爆者全員救済を求める要請書

核戦争に反対する医師の会

児嶋  徹

中川 武夫

山上 紘志

 私たちは、唯一被爆国の医師として、核戦争に反対し、核兵器の廃絶を求める医師・医学者の団体です。

 2003年4月からはじまった原爆症認定集団訴訟は、2009年1月の鹿児島地裁判決で原告・被爆者の13連勝となりました。17地方裁判所、2高裁での裁判に参加した原告は306人で、うち勝訴した原告は135人、敗訴した原告は22人です。これらの判決の特徴は、これまでの原爆症認定基準では、原爆被害の実態を説明することができない、被爆の実態に沿った認定をしなければならないという立場から、申請審査は機械的であってはならないと、厚生労働省行政を厳しく断罪したものでした。

 2008年4月1日から、原爆症認定について「新しい審査の方針」が実施されて以降は、裁判所の判断と、行政の判断が違うケースもあり、判決が出る前に原爆症と認定されて裁判をやめる人、裁判では敗訴したけれど「新方針」で認定となるなど、混乱したケースが相次ぎ、306人の原告のうち認定された人は170人といわれています。また、裁判で勝訴しているのに認定されていない原告は50人、敗訴原告のうち認定されたのでは6人といわれています。

 今後、3月12日の千葉訴訟・東京高裁判決、3月18日の広島地裁判決、3月27日の高知地裁判決、5月15日の近畿訴訟・大阪高裁判決、5月28日の東京訴訟・東京高裁判決と続きます。

 原爆症認定裁判は、原爆被害から60年過ぎても人間を苦しめる残酷な被害であることを、法廷の場から日本と世界へ伝え広げていきました。私たちも唯一の被爆国の医師として、訴訟支援、意見書作成などに加わってきました。しかし、これまで判決では、個々の原告を救済するだけで、認定制度を変えることや、集団訴訟の全体を解決することにはつながっていません。

 集団訴訟が始まって6年、被爆者の高齢化がすすみ、被爆者原告306人のうち、すでに61人がなくなられています。

河村健夫官房長官は昨年11月19日、原告団との面会で「原告全員の救済による訴訟の早期解決」について、「東京高等裁判判決(5月28日)がタイムリミット」と述べ、集団訴訟を一括解決したい旨を表明しました。

被爆者の方々にはもう時間がありません。一日も早い全面救済をはかるには、政治的解決しかないと考えます。

 つきましては、以下の点を要請します。



1、原爆症認定集団訴訟に対する国の控訴を取り下げ、一括解決をはかること。

2、被爆者援護行政と原爆症認定制度を抜本的に見直すこと。

3、緊急課題として国連と核保有国をはじめ、すべての国の政府に対し、核兵器全面禁止・廃絶の国際協定の実現にむけ、日本政府としてイニシアチブを発揮すること。

4、上記達成のために、政府の政治決断をはかること。