「原爆症認定集団訴訟の終結に関する基本方針に係る確認書」の調印を終えて

 

2009年8月18日

核戦争に反対する医師の会

代表世話人 児嶋 徹

  同   中川 武夫

  同   山上 紘志

 

 8月6日、国は、熊本地裁判決について控訴を断念したうえで、原爆症認定集団訴訟の一括解決を決断し、「原爆症認定集団訴訟の終結に関する基本方針に係る確認書」の調印を日本被団協と行いました。

 私たちは、2003年以降、全国17地裁に提訴された原告306人の訴訟集団訴訟は原告が求めてきた「全員救済」で解決することになったことを心から歓迎するものです。また、提訴以来、自らの命をかけてたたかってこられた被爆者の方々に心からの敬意を表します。

 原爆症認定集団訴訟は、2006年5月の大阪地裁での9名の原告全員勝訴に続き、現在まで,2つずつの東京高裁,大阪高裁判決,1つの仙台高裁判決を含む19の裁判所において連続して勝訴してきました。裁判の中では、国が、放射線の被害について、原爆が爆発したときの直爆放射線しか見ておらず、残留放射線や放射性降下物さらに内部被爆を無視して、原爆被害を軽く、狭く、小さな被害として描こうとしていることが明らかになりました。判決では、その国の姿勢が厳しく断罪されたのです。

今年4月のバラク・オバマアメリカ大統領のプラハでの演説において、核兵器を使用した唯一の核保有国として、アメリカは行動すべき道義的な責任があるとしたうえで、「核兵器なき世界への共同行動」を呼びかけたことに、核兵器廃絶をめざす世界の多くの人々が歓迎し、歴史を大きく前進させるチャンスととらえ、行動を強めています。

核戦争防止国際医師会議(IPPNW)米・ロ支部は、両国大統領に書簡を送り、両国指導者が、核兵器を廃絶する核兵器禁止条約締結に向けて他の核兵器保有国と直ちに交渉を開始する事を求め、核兵器不拡散条約第6条に対する責任を果たすことを求めています。その書簡の最後には、「歴史上の偉大な善行を行う機会に恵まれる人はそんなにいません。貴殿には世界を救う機会が与えられているのです。どうか私たちを失望させないで下さい」と記されています。

また、日本政府の官房長官も談話において「唯一の被爆国として、原子爆弾の惨禍が再び繰り返されることのないよう、核兵器の廃絶に向けて主導的役割を果たし、恒久平和の実現を世界に訴え続けていく決意を表明」しています。

 今回の成果は原告団とそれを支援した者だけのものではなく、現在生存している23万余の全国の被爆者に共通のものであり、核兵器なき世界を求めて連帯してたたかっている全国の人びと、世界の人びとが共に喜び合えるものと確信します。

 しかし、まだ救済されるのは極一部であるなど解決しなくてはならない多くの課題が残されています。私たちはそれらを解決するため、被爆者の方々とともに全力を尽くすものです。また、二度と広島、長崎の悲劇を繰り返さないために、核保有国をはじめすべての国の政府がすみやかに核兵器禁止・廃絶条約の交渉を開始し、締結することに合意するよう核廃絶を願う世界と日本のあらゆる人々とも連携して運動をすすめていく決意です。