アメリカによるイラクへの武力攻撃に対し断固抗議する
2003年3月20日
核戦争に反対し、核兵器廃絶を求める医師・医学者のつどい
共同代表世話人 莇 昭三
共同代表世話人 松井 和夫
本日、アメリカ・ブッシュ政権は、イラクへの武力攻撃を開始した。今回の武力攻撃は、いかなる理由があろうとも正当化されるものではなく、国際平和の基本ルールである国連憲章と国連決議を踏みにじるものである。しかも、「現状は査察の放棄や武力に訴えることを正当化するものは何もない」(仏露独外相声明)と安保理外相級会議の開催を提案し、最後の最後まで世界の平和と安全の重責を果たそうと努力をする国連の存在そのものを否定するものである。史上空前とも言われるの地球的規模での反戦、平和を求める世論と運動を無視した暴挙である。核戦争に反対し、核兵器廃絶を求める医師・医学者が参加する団体として、私たちは、アメリカの今回の暴挙に対し、断固抗議の意を表明する。
国連は、昨年11月の国連決議「1441」と安保理が定めた方法にもとづき、イラクへの査察を続け、一部に問題はあるものの着実に成果を挙げ、国連監視検証査察委員会のブリクス委員長が査察継続を求めている中での今回の暴挙は絶対容認できない。
イラク国内では、今なお湾岸戦争当時使用された劣化ウランが原因で、小児白血病などの悪性腫瘍発生率は異常に高いと報告されている。弾薬として使用され微細分粒となり飛散した劣化ウランは一度人体に取り込まれると永久に放射線(アルファ線)を出し続け、細胞を癌化させる危険が極めて高い。一度大気中にばら撒かれた劣化ウランの粒子は半永久的に存在し続け、深刻な環境汚染を引き起こす。今回の戦争でも大量の劣化ウラン弾、弾頭が使われる可能性が強い。核兵器の使用は多数の市民が犠牲になることが確実であり、人道上断
じて許されるものではない。
一昨年の「9・11」以後、アメリカのアフガン空爆のみならず、インド、パレスチナ、チェチェンなどでの軍事行動にテロへの戦争という口実が使われてきた。そして今後、その脅威を理由に戦争を正当化しようとするだろう。さらに、アメリカは、核兵器の先制使用も辞さないことも公言しており、イラクへの武力行使は、中東情勢を不安定化させ、世界的な核戦争への危険を増大させるものとなる。
その行動を全面的に支持しているのが日本政府である。小泉首相は、やむを得ない決断として、アメリカの行動への支持表明をおこなった。これは、憲法9条を無視し、世界の反戦・平和運動に敵対するものであり容認できない。断固抗議の意を表明する。
日本政府が、脅威の可能性を理由とし国連での合意もないアメリカの戦争を正当化することは許せない。今政府が、成立させようとしている有事法制の有事の意味がいかに歯止めがなく都合よく解釈されるものであるかを露呈するものである。戦前の反省と原爆の悲惨を経験している日本国民は、いかなる理由があろうとも戦争行為には絶対反対である。
日本政府は、アメリカに追随するのではなく、国際社会と協調し、国連を中心とした国際平和秩序の維持のために、世界に誇るべき平和憲法の立場にたって、アメリカ・ブッシュ政権に対し、ただちに武力行使の中止を求めるとともに、問題の平和的解決のための最大限の外交努力をおこなうよう、強く要望する。
以上
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