内閣総理大臣 小泉 純一郎 殿
防衛庁長官 石破 茂 殿
石破防衛庁長官のミサイル防衛発言に厳しく抗議する
去る4月22日、石破茂防衛庁長官は、衆議院の「武力攻撃事態等への対処に関する特別委員会」において、次のように述べた。
「例えば広島で原子爆弾が落ちた、長崎で原子爆弾が落ちた、その後、米軍がやってまいりまして、詳細な調査をしております。私も、全文すべて読んだわけではございませんが、あの広島においても、あの長崎においても、爆心地の近くでありながら落命をされずに生き残った方というのがたくさんおられる。では、どういう状況であれば核攻撃を万々が一受けても被害が局限できるかということは、私ども、同時に考えていかねばならないことでしょう。」
「したがって、今全世界が努力をしている。わが国としてもBMDを持つ、そして核抑止力というものがきちんとワークするようにする。万々が一、それでも来た場合にはどうやって局限をするかということも考えなければならない。それによって、本当に多くの人命というものを救うことができるし、・・・国民保護法制とは、まさしくそれを眼目とするものだとおもっています。」(石破防衛庁長官答弁 議事録=衆院ホームページ=から抜粋)
唯一の被爆国・日本の医師・歯科医師として、防衛庁長官のこの暴言を断じて見逃せない。広島、長崎に「原子爆弾」が「落ちた」のではなく、米国が「落とした」結果、多数の人々の人間の命と尊厳が奪われたのである。石破長官は、このことにまったくふれず、生き残った人々がたくさんいたとして、核兵器の本質を覆い隠し、核兵器が「使える」兵器として扱うのは、絶対に認められないきわめて危険な暴論である。
また、石破長官は、ミサイル防衛システムを整備することで、「多くの人命」を救うことができるとし、これが「国民保護法制」の「眼目」であるとのべているが、ミサイル防衛システムとは、つきつめれば宇宙核戦争体制であり、被爆国日本政府の官僚としては、許されない暴言である。このような人物が防衛庁長官の地位にあることそれ自体、由々しい問題であり、任命権者小泉首相の責任はきわめて重大である。
核戦争での犠牲者を局限する方法を考えるなどということは全くの妄想で、核戦争の危機から国民を守る道はただ一つ、核兵器のない世界をつくることである。われわれは、被爆者と帰らぬ死者ととともに、石破長官のこの発言にきびしく抗議する。そして、広島・長崎被爆60周年を迎える2005年を日本政府が核兵器廃絶の世界への転機となるための先頭に立つことを要求する。
2004年5月18日
核戦争に反対し、核兵器廃絶を求める医師・医学者のつどい
代表世話人 児島 徹
代表世話人 松井 和夫