日本のすべての医師・医学者のみなさんへ

第1回「核戦争に反対し核兵器の廃絶を求める医師・医学者の集い」

1987年8月2日  

 私たちは、八月一日、二日、東京において「核戦争に反対し、核兵器の廃絶を求める医師・医学者の集い」を開催しました。この集いには二千名以上の方々の賛同の意思表示を背景に、二九四名の医師・医学者が参加しました。この集いで私たちは@核戦争の阻止と核兵器の廃絶のための医師・医学者の社会的役割、A被爆者医療の今日的課題、B医師・医学者の「反核運動」の三つのテーマで討論、交流し、また、ニュージーランド次期支部長のブライアント博士の講演を頂き、世界の医師たちの反核運動についても学びあいました。

日本の医師・医学者のみなさん!

 ヒロシマ・ナガサキの被爆者は、あの瞬間からすでに四十二年を経過しようとしている現在、なおさまざまな健康障害に苦しんでいます。被爆者の高齢化とともに当然のこととして、成人病とその合併症や運動器の疾患への対処が医療上の問題の一つになっています。また三十二年にわたる被爆者としてのそれぞれの生活歴と関連する心理的・精神的な不安定さへの対応が求められています。

 ヒロシマ・ナガサキの被爆者の健康管理は、同じ日本人である私たち医師の第一級の仕事でありつづけています。このきびしい被爆者の医療を通して、私たちは、核兵器の残虐性と、これを人類に使用した者への限りない憤りを感じつづけてきました。だからこそ、二度と日本に、そして世界のどの地域においても、これ以上あらたな被爆者をつくりだしてはならないことを私たちは被爆者とともに心より訴えるものです。

 私たちはこの集いでの学習と討議をつうじて、核戦争を防止し、核兵器をすみやかに廃絶することは、現代に生きる人類にとって第一義的な緊急課題であることを深く学びました。そのために私たちは、世界で唯一の原子爆弾の被爆国の医師・医学者として、また、生命と健康を守る医師・医学者として、積極的な発言と行動をおこなっていくことが、私たちの厳粛な責務であるとの確信を深めました。

日本の医師・医学者のみなさん!

 本年五月二十九日から四日間 モスクワで世界六十ケ国二千七百人もの医師・医学者が参加してひらかれた核戦争防止国際医師会議第七回世界大会で採択された決議文「我々の信条」は、「核兵器は一部の人々が主張しているように平和を保つものではない」「我々は単に核兵器の数の削減だけでなく、廃絶を主張する人々に同意する」と述べています。

 

いまや「核戦争の防止、核兵器の廃絶」は世界の医師・医学者の共同の要求であります。そして核兵器の廃絶をかちとるためには、核兵器を中心とした力の均衡が平和を保っているという論理にたつ、核兵器への固執勢力を孤立させる世界各国国民の連帯と共同の運動が決定的な力であることも私たちは学びとりました。

日本の医師・医学者のみなさん!

 私たちは、核兵器の廃絶を緊急の課題とする国際的合意の形成をめさして、世界の医師・医学者たちとの協力を強めるとともに、全世界の反核平和勢力の一層の高揚を願っています。また私たちは、昨年「東京から世界への呼びかけ」を採択した日本の伝統ある原水爆禁止世界大会が、核戦争防止と核兵器廃絶、被爆者援護法の制定をかかげてさらに輪をひろげ、大きな前進をとげることを期待するものです。

 「核戦争に反対し、核兵器の廃絶を求める医師・医学者の集い」に結集した私たちは、いま一度、日本のすべての医師・医学者のみなさんに訴えます。人類の平和を願うすべての医師・医学者・医療従事者は、ひろく国民とともに手をとりあい力をあわせて、各地で草の根の運動をひろげ、核戦争に反対し、核兵器の廃絶を求める世論を国の内外で高めるために奮闘しようではありませんか。