政府と国会は、核の軍事利用が懸念される「原子力規制委員会設置法」等
を撤回し、国会事故調査報告を受け原発行政の抜本的な見直しを
核の軍事利用が懸念される「原子力規制委員会設置法」等は撤回すること
6月20日成立の「原子力規制委員会設置法」は、「原子力の憲法」ともいわれる原子力基本法の基本方針を変更し、核の軍事利用が懸念される項目を追加した。それは、原子力規制委員会設置法の付則に原子力基本法2条の追加として、「我が国の安全保障に資する」旨の条文を加えたことである。
この追加条文は、政府法案にはなく、民自公の3党修正で追加された。原子力基本法2条は、「公開・自主・民主」の平和利用3原則など原子力開発の指針となる重要な条項であり、これを下位法である設置法の付則という形で変更したことは、内容的にも手続き的にも到底容認できるのもではない。
同日には、「宇宙航空開発機構法」も修正法が成立し、「平和目的」に限定している規定を削除し、防衛利用を可能とした。軍事関連衛星の開発などに宇宙航空機構もかかわることに道を開いたものである。
これらの動きを見れば、「我が国の安全保障に資する」旨の追加条文が、核の軍事利用につながる懸念は高いといわざるを得ない。
さらに、「原子力規制委員会」は、原発立地推進の一翼を担ってきた環境省のもとに設置され、原子力推進機関からの分離・独立が骨抜きの規制組織となったこと、放射性物質による環境汚染や健康被害の防止措置が盛り込まれていないこと、原発運転期間を原則40年とし、最長60年まで延長可能としたことは、老朽化原発の半永久的運転を容認するもので、安全性より企業利益を優先したものであること、など福島原発事故の教訓を生かす内容とは全くなっていない。
国会事故調査報告を受け、原発行政の抜本的な見直しを行うこと
7月5日、国会福島原発事故調査委員会(黒川清委員長)から国会に調査報告書が提出された。同報告書では、今回の事故は、「自然災害ではなく、明らかに人災である」「事故は何回も対策を打つ機会があったにもかかわらず、歴代の規制当局及び東電経営陣が意図的な先送り、自己の組織に都合の良い判断を行うことによって、安全対策が取られないまま発生した」「規制する立場とされる立場の『逆転関係』が生じ、規制当局は電気事業者の『虜』となっていた」「原子力安全についての監視・監督機能が崩壊していた」「依然として事故は収束しておらず、被害も継続している」などと指摘している。
これまで野田政権は、福島原発事故の教訓に学ぼうとせず、大飯原発再稼働を強行決定し、「原子力規制委員会設置法」でも安全性より企業利益を優先し、核の軍事利用にまで突き進む姿勢を示してきた。
今回の福島事故報告書は、こうした野田政権、及び民自公3党に対する厳しい批判ともなっている。
私たちは、政府と国会が今回の報告書による福島原発事故の教訓を真摯に受け止め、原子力基本法2条の変更を含む「原子力規制委員会設置法」の撤回、大飯原発再稼働の中止、被災者の救済と被災地の復興、原発に依存しないエネルギー政策への抜本的見直しなどに全力をあげるよう要求する。
2012年7月9日
核戦争に反対する医師の会