IPPNWコスタリカ支部との懇談   山上 紘志(大阪)
 人口約413万人のコスタリカ(スペイン語で富める海岸の意味)共和国は、1948年に平和憲法により軍隊を放棄し、1983年に永久的非武装中立政策を宣言している。国連を中心とした平和主義外交のもとで、特に米国や中南米諸国との関係を重視し、内戦の続く周辺諸国の安定化と民主化の促進に積極的に努力している。もと大統領のオスカル・アリアス氏は世界的にその貢献が認められて、ノーベル平和賞を受賞している。軍隊を持たない結果、国家予算の30%を文教費とし、保険の加入の有無、国籍などにかかわりなく、だれでも医療を受ける権利が法的に保障されている。
 モンテベルデ自然保護区では、環境保護の先進国としての自然保護の政策を学び、豊富な生き物の実態を見学したり、豪雨のなかを熱帯雲霧林を散策した。そこからサンホセに帰途についた14日の夜に、IPPNWコスタリカ支部の会員と私たちの有志が会食しながら懇談会を持った。この懇談会は、代表世話人で今回のツアーの団長である松井和夫氏が昨年にワシントンDCで開催された第15回IPPNW世界大会で、参加されていたコスタリカ支部会長のスロン氏に要請し、その後もメール交換された結果実現したものである。
 この支部の名称は、「Organizac弛n de M仕icos contra la Violencia」(反暴力医師の会)と言い、会員数は30名である。その活動の中心は、国内的には平和教育の推進、家庭内暴力・児童虐待・TV暴力の防止、国際的には核兵器廃絶、紛争の平和的解決、国際法に基づく国家間の諸問題解決に努力している点にある。
 豊かな口ひげをたくわえた会長はフセインに似ているだろうと参加者を笑わせ、始終心のこもったホスト役を務められた。参加有志のなかに、戦前に移民地のチリで生まれ、その後強制送還された長崎で被爆された熊本県被団協事務局長の中山高光氏がご夫人とともにおられた。中山氏はツアー前に被爆実態の写真パネルを当支部に郵送することを強く願っておられた。郵送ルートが確証できずに、思いがとげられなかったことを残念がっておられた。スロン会長は当支部が核戦争反対、あらゆる核兵器廃絶に確実な行動をとりながらも、広島・長崎の被爆の詳細な実態に疎いことを指摘し、映画監督スチーヴン・スピルバーグがホロコーストの犠牲者を繰り返し人びとに思い起こさせたように、原爆の死者や被爆者のことを忘れてはならないと提起し続けられていることを知った。
 コスタリカからは5名、日本からは8名の参加者は和やかに懇談し、来年九月北京で開催される第16回IPPNW世界大会で再会することを誓いあった。
 原稿執筆にあたり貴重な助言と資料をいただいた代表世話人松井和夫氏に深謝します。