モンテベルデ自然保護区探訪   中川 武夫(愛知)
 コスタリカ三日目は、モンテベルデ自然保護区へのバスの旅。途中の下り道の沿道には、あちこちに特産のコーヒー畑。もう少し大きな木を想像していたが、日本の茶畑を少し大きくした程度。畑は、適度な日陰をつくるため、高めの木が点々と植えられている。
 ハイウエーを折れて登りに入ると道は狭く、くねっている。でも、3分の1くらいは何とかアスファルトで舗装されているが、その先は……。なんでも、道を改修すると観光客が多くなりすぎると地元が反対し、改修ができないのだそうだ。両側に広がる山麓は、急な斜面に至るまで、草地になっており、牛や馬などが放牧され、谷の向こうにまで広がっている。ガイドの足立さんによれば、牧場を作るために森林を大規模に伐採したことで、保水能力が減少するなど深刻な環境問題を発生させているという。5〜11月までが雨季とのことで、今年はわれわれが来るまでは雨が少なかったとのこと。
 登るほどに道が狭くなり、穴ぼこでバスは大きくゆれ続け、谷側は深い落ち込、大型バスで来たことに若干の後悔を感じたほど。4時間ほどで、モンテベルデ到着。モンテ・ベルデとは、「緑の山」とのこと、そのまんまの名前。この地域は、朝鮮戦争への徴兵に不服従で6ヶ月の投獄生活を送ったクエーカー教徒が、子孫を戦争に巻き込ませないために「軍隊のない国・コスタリカ」目指して数千キロを旅して入植したという。そして、所有する土地の3分の1は保護することを決め、貴重な鳥や虫、植物が生息する森林が「自然保護区」として保全されたのである。しかし、すでに「黄金の蛙」など何種類かの貴重な動物が失われたという。
 モンテベルデ自然保護区は、「自然保護のため一日の入場者を制限しており、入場できないこともある」とのことで、朝急いで出発。晴れていたのでしめしめと思っていたが、自然保護区に到着したころからぽつぽつと。自然保護区探訪の間は降りっぱなし。もっとも、「雲霧林」という名が示すようにいつも雲がかかっている場所なのでもあろう。雲霧林はうっそうとした森林で、日本では見られない様相であった。環境汚染の指標となる、透けて見える葉のシダ、葉の長さが2〜3メートルで茎の高さが数メートルにもなるシダ類、また1本の木に数十種類の植物が着生している。寄生でも共生でもなく、着生で、お互いには依存関係がないとの事。確かに、これだけ雨があれば十分に水分は補給できるし、問題はないのであろう。谷にかかるつり橋の上から、樹木を見おろしたり、目の先すぐに見るという趣向もあり、よく見れば「ラン」のさまざまな種類が大木に「着生」している。またそれ以外にも、いろんな花が咲いている。説明によれば、こうした花に溜まった水の中に卵を産むカエルがいて、おたまじゃくしからカエルになるまで花の中で生活するという。花の蜜を吸うハチドリも多種類で、くちばしが花の形に合わせて蜜を吸いやすいような形になっていると。着生植物の中には、つるを何メートルもたらして、地面にまで届かせ、水分などを得ているものもある。木がまばらになれば、光を好む植物が育っているなど、多くの植生が見られる。動物はいろいろ生息しているはずであるが、一部の蝶と鳥、猿を見かけただけであった。残念がる私たちに、ガイドは、「動物は人間を見ていると思われるが、潜んでいるので人間には見つけられないのだ」と。まことにごもっとも。
 自然の中では実に不思議な生命の営みが連綿と繰り広げられ、太古の昔から今日の自然を作り出してきたことに改めて感心するとともに、こうした自然を保全することの意味を考えさせられた。コスタリカは発展途上国でありながら、国土の約27%を「保護区」として保全していることは、世界的にも注目されている。これ等は、当然軍隊を放棄し、民主主義の確立を目指し、医療と教育は原則無料としていることと大いに関係しているのであろう。
 自然保護区の出口に近づくと、なぜか日が差してきた。