3日目に訪問した国立リハビリセンターは、31年前のポリオの流行がきっかけで、ウンベルト・ロペス医師個人が設立したものであった。しかし、その後、資金難のため運営しきれず、その後CCSSが資金を出して国立病院となっている。
ここではセラピストの養成もしており、地方の病院へ派遣している。しかし、まだ充分ではなく、地方でのリハビリ施設の充実が今後の課題のようである。全部で89床で4人部屋であるが、全ての部屋にトイレがついている。シャワーは別に設けられている。年間5万人が利用し、入院患者はのべ1000人〜1200人平均在院日数は40〜75日間。脳・脊髄障害の患者が主体である。国立の老人病院が別にあるが、リハビリだけの老人は、こちらのリハビリセンターで治療を行っている。必要があれば、直ぐに入院できる。待ち時間は無い。職員数は300人で、医師は35人、理学療法士25人、作業療法士5人であるが、看護師の数は明確には答えてもらえなかった。他の視察した病院と同様、ここでも看護師の姿を見かける事は少なかった。国の統計資料でも医師よりも看護師数の方が少なく、日本と看護師の概念が違うのかも知れない。職員の約60%が女性だとのこと。医療機関であるから、そこは日本でも同様だ。治療開始までの待ち時間が殆ど無い。
リハビリ訓練施設は豪華とは言えないが、随所に日常生活へ復帰させようとする熱意が感じられる。障害者用の便利で高価な設備で訓練しても、各家庭ではそれを購入できない。現状に適合させた訓練施設だとの印象を受けた。CCSSの評価は達成度で95%、患者の満足度は93.5%。医療の質を上げ、患者や家族を教育することによって入院期間を短縮できるように努力している。
今のところ大きな問題はおこっていない。社会的入院は無い。ここでの治療目的を一応達したなら、在宅に戻るか施設介護かになるが、家族に対して介護方法などについての講義を行い、可能な限り在宅に戻るようにしている。入院日数を減らすために、地域にセラピストが配置されているが、家族が放棄したような場合は、NPOが運営するケアセンターが請け負うが、今のところ大きな問題は起こっていない。小児は原則的に外来医療である。小児専門のリハビリ施設の必要性は、感じていてこれから作る予定とのこと。障害児を搬送する設備の整った救急車が無いので、寄付をお願いしたいと頼まれた。
病院の照明がかなり暗い。参加者の1人がそのことについて質問すると、けげんそうな顔で「これで問題がありませんから」。確かに安全な最低の明るさで充分である。 |