第13回「核戦争に反対し、核兵器廃絶を、求める医師・医学者のつどい」
子どもたちに伝えよう核兵器廃絶と平和の重み
〜核兵器いらんぞなもし in松山〜
2002年10月19,20日
基調報告
世話人 大場敏明
(1)アメリカによる戦争拡大、核戦争の危機など緊迫した情勢と
第13回「つどい」の意義
2001年12月の「第12回集い」から約−年になろうとしています。
この間、昨年の同時多発テロ以後、「テロ対策」を口実としたアメリカによる戦争拡大と核使用の危険が強まっております。アフガンへの軍事介入は、−年を超え、印パ間の核戦争の危機も爆発一歩手前まで行き、アメリカの新しい「核態勢みなおし」路線=「先制核攻撃路線」の公式な決定があり、そしてここ3−4ケ月フセイン政権への非難が急激に高まってきており、イラク攻撃前夜ともいえる重大な状況と緊張が続いています。
@「今年は戦争の年」と宣言したブッシュ大統領が、今年初めに一般教書で悪の枢軸=イラン・イラク・北朝鮮3国との対決路線を鮮明にし、その後明らかにされてきたのが「核態勢見直し報告」(NPR)でした。これは、中国・ロシアの核保有国とイランなどの非核保有国をも含む7ケ国を核攻撃の潜在目標としたものです。そして、「テロに対する対抗」あるいは「大量破壊兵器の開発を思いとどまらせる」ために一方的・先制的な核兵器使用の計画を打ち出した核戦略です。いまだかってなかったほど危険な、そして一方的な「先制核攻撃路線」で、核使用を公式な方針として打ち出した大転換の核戦略です。
そしてブッシュ大統領は、6月にイラク・フセイン政権転覆の「包括的な作戦」の開始を指示し、国連総会でもフセイン政権が「平和にとっての脅威だ」と演説して、その打倒の承認を迫りました。しかし、ドイツ、フランス、ロシア、中国はイラク攻撃に反対し、非同盟諸国も「政治的なテロリズムだ」ときびしい弾劾の声明を出しています。その中でも、10月10日に米議会は両院とも、イラクに対する軍事力行使権限をブッシュ大統領に与える決議を可決する事態に至っており、イラク攻撃前夜ともいえる重大な状況になっています。
「先制核攻撃」路線に動き出しているブッシュ政権は、地中貫通兵器の開発・「小型」核兵器の開発をめざしつつ、未臨界核実験を続けて行い、ABM(弾道迎撃ミサイル)制限条約脱退、CTBT(包括的核実験禁止条約)批准棚上げ、など、―国主義的な"覇権主義の暴走"状況に陥っています。そしてインド・パキスタンの核使用の全面戦争の危機もはらんだ状況もからんで、IPPNWが指摘する、「冷戦時代のもっとも危険だった時期以来の核戦争の危機」は、ますます深刻になってきています。米科学雑誌がシカゴ大学にある「終末時計」の針を2分進めて、世界滅亡7分前に設定したほどです。
しかし、このブッシュの暴走に対して、「国家安全保障戦略」を可決した米議会内でも三分の一の反対が出ており、世界中の批判も高まってきており、国際世論の多数が「国連の枠内での解決」へと進む方向にある状況のなかで、軍事攻撃反対・核戦争反対の国際的な大運動と国際世論の高まりがますます重要になってくる局面を迎えています。
Aわが国の自民党政権は、アメリカの世界戦略に積極的に協力して、次々と戦争体制つくりを押し進めてきました。1999年「周辺事態法」と「国家・国旗法」制定、2000年には「船舶検査法」を成立させ、昨年は「テロ対策案」を決めて、ブッシュ報復戦争に協力してきました。さらに小泉内閣は、今春の通常国会に武力攻撃事態法案など「有事法制三法案」を提出したものの、継続審議となったために、この秋の臨時国会では「必ず成立」させようと、異例の構えで準備を進めている重大な情勢の中にあります。アフガンの戦争に協力加担してきた上に、今度はイラクへの軍事攻撃、核攻撃すらありうるアメリカの戦争に、日本が自動的に参戦ということすらおきかねない状況にあります。
唯一の被爆国であるにも拘らず、歴代自民党政府は、一貫してアメリカの核政策に追従を続けてきました。そして、さる6月には、印パ核戦争の危機が高まり、有事法制を審議している最中に、こともあろうに福田官房長官が国是である「非核3原則」の見直しを発言し、強い批判が浴びせられました。また、アメリカなどの未臨界核実験にも一切の抗議もせずに事実上協力的態度に終始してきていますし、核廃絶の決議案。被爆行政も、松谷裁判の最高裁判決にも拘らず後退しようとしています。昨年は原爆症認定基準をかえって厳しいものに変えたり、外国人被爆者の援護にも、誠意ある態度をとろとしていません。このような、小泉自民党政権のアメリカ核戦略追従政策の変更を求め、非核3原則の法制化と被爆者援護の充実など、非核政策の確立と実施を強く求めていかねばなりません。
B核戦争の危機にあたり、被爆者は、度重なるアメリカの未臨界核実験や非核3原則見直し発言に抗議して、核強化と核戦争政策に反対する運動の先頭にたってきました。そして、7月9日には原爆症の認定を求めて、八都道県七十六人の被爆者が集団申請し、9月6日には第二次として十五都道県の被爆者六十三人がいっせいに申請しました。被団協は「被爆行政を変えたい」と訴訟も構えており、「いのちをかけた最後の戦いだと決意を語る申請者も」と被爆者たちの切実な訴えが新たな戦いを作ってきています。「日本の核兵器容認政策を変えさせ、核兵器廃絶の運動につないでいく全人類史的運動でもある」(日本原水爆被害者団体協議会声明)との決意を、我々も共有して、被爆者と連帯した戦いが求められています。
在外被爆者の問題も、近年注目を浴びるようになり、「在外被爆者にも被爆者援護法の適用を」との切実な要求が、地裁レベルでは勝訴したものの、国側が控訴している。さる7月には日本政府の在外被爆者支援事業が1カ月遅れスタートしたが、来日しての治療など実現困難な実態を無視した事業で、韓国原爆被害者協会も支援事業への賛否を留保している状況で、在外被爆者の期待を踏みにじり続けている。「血の通った被爆者援護」を要求する、被爆者たちの戦いに、連帯していかねばなりません。
核兵器反対のジャーナリズム(中国新聞など)も、新聞報道やホームページでの核廃絶と被爆者援護の論陣は、少なからぬ影響をあたえ、見るものの心を動かす力を感じます。広島・長崎市長など平和市長会議の立場からの核廃絶・未臨界核実験反対、そしてアメリカの核戦略への厳しい適切な批判が出されています。核廃絶をめざす草の根運動・NGOグループ・原水爆禁止の諸組織、反核法律家協会・芸術家の団体など、粘り強く核廃絶の運動を組んできた到達の上に、直面する危機的状況に断固として核戦争を阻止するために立ち上がる情勢が来ているといえます。「非核自治体運動」が全国で積極的にとりくまれており、非核三原則法制化を求める決議や核兵器廃絶の「明確な約束」の実行を求める意見書などが決議されてきています。
この間、日本の反核医師運動は、IPPNW世界大会に参加し、「つどい」が全国的組織として、機敏な「アピール活動」を取り組み、各県医師の会や、「つどい」に賛同する医師・歯科医師の草の根での活動、高齢化する被爆者の医療の取り組み、被爆者援護の充実、戦争に反対し、核兵器のない、平和憲法がいかされる日本と世界の実現への運動を組んできました。
核戦争はいかなる形でも絶対許してはならないし、日本の戦争主体国への変質の策動も必ず阻止し、21世紀を核兵器のない平和な世紀とする波を大きなうねりにするために、日本における反核医師運動の強化・発展を討論し、活動発展の方向性を意思統一する、「第13回集い in 松山」が開かれますが、反核運動前進に向けて、重大な意義を持っているものです。
(2)集いの活動、反核医師運動の1年と現在の課題
戦争の危機が高まり、日本を戦争をする国へとかえるたくらみが進行してきた状況のもとで開かれた昨年の「第12回集い」では、核兵器廃絶と核戦争反対をめざす広範な人々と手を組んで、核兵器廃絶と平和の思いを自発的行動にしていくことを確認して、以下の6つの活動を提起しました。
1)「平和テキスト」の完成と活用
2)反核の思いの意見交換を活発に
3)反核の組織・草の根運動と手を組んで、多様な企画を組み、世界を変える運動の展望を切り開く
4)被爆者から学び、被爆者医療を追及
5)IPPNW日本支部、南北朝鮮、中国の医師たちと手を組んで、北東アジアの非核地帯の実現に力を尽くす
6)各地の医師の会で、記者会見 マスコミ対策、IPPNWの活動紹介 など提案した。
@昨年9/11の同時多発テロ以後、急激に高まる戦争拡大と核使用の危機の増大、そし
て日本がアメリカの戦争に参加していく戦争をする国への大転換が、ますます強められようとしている危機的状況の中、これに対して、核兵器廃絶と平和を守る勢力は、報復戦争反対・核使用反対、有事立法反対の主張と運動を繰り広げてきました。多くの国民と諸団体の運動の結果、現在のところアメリカによる核使用を許さず、イラクへの軍事攻撃にたいして、欧州諸国も多くが反対する状況も出て、戦争拡大策と核使用を推進しているアメリカの孤立状況もでてきており、有事立法も、通常国会での成立を許さずにきました。
「つどい」として、無差別テロに対する報復攻撃・戦争の危険・核実験・アメリカの戦争政策・有事立法など、情勢に機敏に反応して声明・抗議文など出してきました。
反核・戦争反対の諸行動・声明発表に各県医師の会も取り組んできました。
*北海道・声明「私たちは有事法制関連3法案に反対します」(6月)
*富山・抗議文・政府首脳の非核3原則見直し発言に抗議し、撤回と政府閣僚の罷免を要求する
*愛知・声明「有事法制の廃案および非核3原則の遵守を求める声明」(7月)
*京都・IPPNW京都府支部、「核兵器廃絶にむけた小泉首相への訴え」を要請(4月)、声明「アメリカ、イギリスの臨界前核実験への抗議」
*「有事法制反対医師緊急アピール」短時日のうちに1,712人の賛同が得られました。
第一次集約の時点で、国会内で共同呼びかけ人の室生保団連会長、肥田民医連会長が記者会見をおこない、民主党、共産党、社民党の医師国会議員が同席しました。
A反核の思いを高めるための意見交換や多様な企画で運動の展望を語り合ってきました。
意見交換として 各県医師の会総会で 講演・討論が行われ、平和展・戦争展などに共催して企画に取り組んでいます。原爆展も引き続き、各地でとりくまれています。
*ピースフェスティバルCHIBA2002 470名が参加。
*京都医師の会「平和のための京都の戦争展」への協力
*和歌山県医師の会○ 「沖縄の地でー丸木位里、丸木俊の志を継ぐ!」の平和講演会、沖縄ツアーの実施
B被爆者から学び、被爆者医療を追及し、アメリカの反核医師団体との情報交換
松谷訴訟の勝利など被爆者援護の運動も、着実な前進が見られるなかで、原爆症の認定を求める集団申請がいよいよ開始されました。各県で、被爆者の申請の相談や意見書作成などに積極的に協力してきています。被爆者医療も、引き続き取り組んできています。
C2年越しの課題である平和テキスト作成については、ワ−キング・グル−プが、この間、5回会合をもち、1回は合宿形式の会議も持って、「平和テキスト」の完成へ努力してまいりました。あと一歩の段階に達しており、来年1月には発行へこぎつけようと作業を進めております。発行のおりは、反核医師の会で、1000部は買取りして、販売する予定でおりますので各県医師の会のご協力を、お願い致します。
DIPPNW世界大会への参加、国際交流のとりくみ
第15回IPPNW(核戦争防止世界医師会議)世界大会に、「つどい」から20名が参加し、積極的な発言がなされました。大会は、全体として、アメリカの危険で一方的な政策への非難が相次ぎ、核廃絶と平和への熱い思いが討論され、反核医師運動の前進に寄与しました。
E各地の医師の会のとりくみでは、草の根反核運動を継続してとりくんできました。しかし、27県ある「医師の会」の中には、休業状態の県も少なからずあり、現在の厳しい情勢を切り開く運動の組織体にふさわしい到達ではありません。活動の維持・継続を実現している県に共通しているのは、一番の要である事務局体制の確立・整備にあることです。進んだ教訓を学びあい、各県での活動の強化と、空白県の克服に取り組む必要があります。
(3)反核医師運動の今後の活動方向
緊迫した、深刻な状況が続いている今、日本にとっても、世界にとっても大変重大な局面にあることを、十分認識を深めていくことが重要です。今の厳しい情勢は、政府・NGO・反核平和組織それぞれに核兵器のない平和な世界をどう創りあげていくかを、深刻に問いかけています。診療に追われている我々個々人も、そして、「反核医師の会」の組織としても、医学・医療者としての社会的良心を今こそ発揮しなければならない重要な局面を迎えていると思います。
個々人の自発的熱意を基礎としつつ、反核医師の会の組織に結集して、諸団体とももっともっと連携・協力を強めて、核廃絶・被爆者援護の大きなうねりを作りましょう。進歩と平和、核兵器のない世界へと大きく歴史の歯車を動かそう。
@ 緊迫しているイラクへの軍事行動・核使用を阻止する運動に積極的に取り組み、有事法制反対・非核3原則法制化をめざす運動を強める。
・イラクへの軍事行動反対、核使用反対の国際的連帯の運動に合流する
・日本政府には、非核3原則の法制化を求め、東北アジアの非核地帯化を目指す。
・有事法制反対の取り組みを強めて、法案成立を阻止する
A 被爆者援護の充実めざし、被爆者組織と協力してすすめる
・被爆認定集団申請を支持し、全面的に協力する。医師の社会的使命を、今こそ発揮しよう。
多数の被爆者の申請を実現するために、意見書作成に多くの会員医師が勉強し、取り組もう。
被爆者組織・弁護士組織と協力して、申請運動に全力をあげて取り組もう。
・在外被爆者問題にも取り組み、すべての被爆者が日本国内でうけている補償を等しく保障する
B 国際的反核医師運動との連携をさらに強める
・国際核廃絶協定締結への運動・核先制不使用の協定を追及する
・国際連携活動としてのコスタリカ視察旅行に多くの医師の参加を呼びかける
IPPNWの大会などが予定されていないこの1年、最大の行事になる
C 草の根組織 反核組織と共同(反核法律家協会など)して平和事業を各地で取り組む
・各県で、平和集会・反核写真展など、共同して取り組もう。
・近くの県反核医師の会同志で、協力した取り組みも作っていこう。
D 「反核医師の会」の活性化
・平和についての基本的な討論(「平和テキスト(仮称)」の活用)
・若手医師の参加を強め、高齢の活動家医師にだけ依存する状況を改善する
・「会」のない県での設立(今回の四国の経験、次回が期待される沖縄)
・事務局体制の確立、整備を強める
・ 近接県組織共同の事業や、地方ブロック協議会を可能なところで追及する
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