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反核医師のつどい20周年
核廃絶へ力をあわせ新たな前進を
全国から335人が参加
被爆国医師として社会的責任を果たそう―。「第18回核戦争に反対し核兵器の廃絶を求める医師・医学者のつどい」が9月23日、24日に京都市の立命館大学、京都産業会館シルクホールで開催された。
核兵器使用は不可能――ティルマン・ラフ氏が記念講演
1日目、IPPNW(核戦争防止国際医師会議)オーストラリア代表のティルマン・アルフレッド・ラフ氏が「核はなくせる I can, You can, We all can」をテーマに記念講演した。ラフ氏は、世界中の核兵器の千分の1を使用するだけで食料難や気候変動など地球上に異変が起きると指摘し、「どんな軍事目的をもってしても核兵器使用は不可能だ」と強調。対人地雷禁止条約など過去のNPO運動の成果にもふれながら、「核廃絶のために、われわれ世界中の仲間が協力することが大切」として、ラフ氏が中心になって進めているICAN(International Campaign to Abolish Nuclear Weapons 核兵器廃絶国際キャンペーン)への参加を呼びかけた。
非核保有国を増やそう――IPPNW事務総長・片岡勝子氏が特別講演
記念講演に先立ち、JPPNW(核戦争防止国際医師会議日本支部)事務総長の片岡勝子氏が「JPPNWの活動」と題して特別講演をおこなった。南半球が非核地帯になっているなかでの「北アジア」の役割を強調。日本の非核三原則、朝鮮半島非核化宣言に続いて、モンゴルの非核兵器地帯宣言の意義を指摘し、「核兵器に依存しない非核保有国を増やそう」と訴えた。
記念講演先立って開催された全体会では、「20周年を迎えた私たちの取り組みと課題」「20年の活動の奇跡」と題して、基調報告と特別報告、各地の活動報告がおこなわれた。
20周年を迎えた私たちの取り組みと課題――全体会を開催
全体会の冒頭、山上実行委員長の開会挨拶のあと、広島、長崎両市長、原水爆禁止日本協議会、原水爆被害者団体協議会および、IPPNW元会長のアシュフォード氏からのメッセージが紹介された。
反核医師の会の原和人常任世話人が基調報告をおこないました。基調報告では、核兵器と平和をめぐる情勢を報告し、核兵器の廃絶にむけて、北東アジアの非核地帯の実現や「ICAN」などの運動、原爆症認定集団訴訟、被爆者医療などのとりくみの重要性を強調。唯一の被爆国の医療の専門家として、被爆の実相を伝えたり、被爆者の支援や、核兵器の廃絶をめざすさまざまな創造的な取組を行なおうと訴えた。最後に、「申し合わせ事項」にもとづき、3年を経過した「反核医師の会」の活動を紹介。「米国は新たな核戦略の拠点に日本を組み入れ用としている。私たちは、2010年の核不拡散防止条約(NPT)再検討会議に向け、国民の間に運動を広げよう」と呼びかけた。
続いて、児島徹代表世話人が「20年の活動の軌跡」と題して、特にこの10年間の歩みを資料なども活用し詳しく報告。この中では、初期の「つどい実行委員会」を牽引した桐島正義、田村清、米沢進、河野和夫、安賀昇の各氏の在りし日の活躍などがスライドなどで紹介された。
各地の活動報告
初日の全体会では、5人の医師が各地の活動を報告した。
反核京都医師の会世話人の川合一良医師は、日本で初めてノーベル平和賞を受賞した湯川秀樹が核兵器廃絶運動に果たした業績にふれながら、京都での反核運動について紹介。湯川秀樹の日本国憲法への強い思いと「核は絶対悪であり、人類とは共存できない」という決意はわれわれへの大きな遺産であると報告した。
奈良県の坪井裕志医師は、9月に「奈良反核医師の会」が全国で29番目の結成をしたことを報告。
全国の会の常任世話人で、広島共立病院の青木克明医師は、原爆認定訴訟について「政府は敗訴が続く中で、原爆後障害症治療指針を廃止し、医師意見書の書き方を難しくした。また認定審査で肝機能障害をほとんど却下するなど、反撃に出ている」と現状報告。
同じく全国の常任世話人の沖縄・武居洋医師は、6月に開催されたTPPNW北アジア地域会議に参加した報告をおこなった。
京都民医連中央病院の村上純一医師は、昨年6月にカナダ・バンクーバーで開かれた「世界平和フォーラム」に参加した経験を各地で講演活動を紹介。村上医師は「仕事に埋もれがちになるが、講演活動が平和を考えるいい機会になっている。若手医師にもっと平和を学ぶ機会を与えてほしい」と訴えた。
東アジアの非核化めざし議論――市民公開シンポジウム
2日目の市民公開シンポジウム「東アジアの非核、安全保障と日本国憲法」では、4人のパネリストが報告。「冷戦はアジアでは終わっておらず、冷戦の克服はアジア全体の課題」などとディスカッションした。
藤岡惇立命館大学教授は、宇宙の軍事利用と先制攻撃戦略、MD(ミサイル防衛)構想をすすめるアメリカと、それに追随する日本を批判。冨田宏治関西学院大学教授は、「『犠牲を払ってまでアメリカは北朝鮮から日本を守るのか』という疑念が、日本のタカ派政治家や研究者による相次ぐ核武装発言につながっている」と指摘した。
東アジアとの国際関係について、大西広京都大学教授は「“日本人”“中国人”という民族意識だけではだめ。“われわれの東アジア”という考えが必要」と強調。徐勝立命館大学教授・コリア研究センター長は「東アジアの支配体制の変化が日本の孤立を生んでいる」と指摘し、朝鮮半島と日本の友好関係の構築を訴えた。
まとめの全体会では、「すべての核保有国に、直ちに核兵器廃絶に向かうこと」などを求めたアピールを確認し閉会した。
来年の「第19回つどい」は、11月22日、23日に、石川県金沢市で開催される予定。